一枚のはかきではじまる国際協力“世界寺子屋運動”

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“世界寺子屋運動”は国際識字年(1990年)をきっかけに公益社団法人日本ユネスコ協会連盟によって始められた運動です。現在は「2015年までにすべての人々に教育を」をスローガンに途上国への教育支援を行っています。

(公財)名古屋国際センターが事務局を担う“世界寺子屋運動”名古屋実行委員会では、市民の皆様から寄せられた書き損じはがきの回収などを通じた資金作りなどの協力活動を展開し、各国の識字教育プロジェクトを支援しています。2011年度は、アフガニスタン、カンボジア、ネパールの3か国、3つのプロジェクトに総額450万円の支援金を送りました。

プロジェクト現場からの報告をお届します。(写真提供:(公社)日本ユネスコ協会連盟)

 

カンボジア

プロジェクト名:カンボジア・アンコール・寺子屋プロジェクト(寺子屋を核とする識字教育と職業訓練事業)

  • 実施団体(*):日本ユネスコ協会連盟カンボジア事務所、シェムリアップ州教育局
  • 主な対象:就学前児童(3~5才)、子ども、成人(15~45才)
  • 非識字率:22%
幼稚園クラスで学ぶ子ども

 

内戦がもたらした貧困の連鎖を寺子屋が断ち切る
1970年代のポル・ポト政権下で知識人を中心に多くの尊い命が絶たれたカンボジア。特にシェムリアップ州は、クメール・ルージュ(ポル・ポト派の兵士)が最後まで戦闘を繰り広げていたため復興が出遅れ、教育を受けられないまま大人になった人たちがたくさんいます。2011年度、同州内のチクライン郡のタトラウ村とバンテアイスレイ郡のスラックバーブ村にアンコール寺子屋プロジェクトにとって8軒目、9軒目となる寺子屋が完成しました。タトラウ村では、村の4割以上の人たちが未だに読み書きができず、貧困に苦しんでいます。さらに、小学校に入学したものの6年生を終えられずに学校を中途退学してしまう子どもたちが半分くらいいるのがこの村の現状です。こういった課題を解決するため、寺子屋では成人向けの識字クラスのほか、学校を中途退学した子どもたち向けの復学プログラムを行う予定です。村の人たちに選ばれた寺子屋運営委員(*)会メンバーが中心となり、いよいよ貧困の連鎖を断ち切るための寺子屋活動を開始します。

寺子屋幼稚園が就学率アップに貢献
地域のお母さんたちからの熱い要望に応え、2010年に始めた寺子屋幼稚園。お母さんたちが家事に追われる朝7時から9時まで、寺子屋では3歳児から5歳児までの子どもたちを預かっています。2011年度は、8つの幼稚園クラスが開かれ、225人の子どもたちが通いました。幼稚園に通うことで、子どもたちはお絵かきや歌やダンスはもちろん、挨拶の仕方、簡単な読み書きも習います。今年は寺子屋幼稚園を卒業した子どもたち85人が無事地元の小学校に入学することができ、就学率アップにも貢献できました。

チョンクニア産のバックが日本に流通を開始
2006年にオープンしたトンレサップ湖畔のチョンクニア寺子屋。周辺に自生するホテイアオイ(熱帯性水草。別名ウォーターヒヤシンス)を採取し、それを加工してバックを編み上げる技術を村の女性たちが学び始めたのは2007年のことです。それから4年が経った今、チョンクニアでは30人の女性たちが高い技術を身に付け、商品を日本にまで流通させることが可能になりました。現在、日本のお母さんたちをターゲットにした通販カタログ(ベネッセコーポレーション出版)を通じて、販売が行われています。

 

ネパール

プロジェクト名:ネパール寺子屋プロジェクト

  • 実施団体:ノンフォーマル教育ナショナルリソースセンター
  • 主な対象:非就学児童、成人女性(15才以上)、青年(18~40才)
  • 非識字率:42%

2002年から始まった「ネパール寺子屋プロジェクト」では、釈迦の生誕地ルンビニとカトマンズ近郊において、教育格差をなくすため、学校に行っていない子どもの教育と女性の非識字の撲滅を大きな目標に活動しています。

ルンビニでは学校に行っていない子どもがプロジェクトの12村で約4,400人。就学年齢の児童の約17%に及びます。さらに、女性の非識字者数は約14,000人。識字率は40%程度しかなく、女性の非識字者数は、男性の2倍にもなります。

 

寺子屋での小学校クラス・識字クラス展開
2011年度は、小学校クラス、識字クラスを修了した生徒を対象とした女性識字後クラス、ネパール政府の「全国識字キャンペーン」識字クラス(主に女性対象)、成人女性のための初等教育クラス、幼稚園クラスなど多くのクラスが寺子屋で実施され、合計で3,212人が学ぶことができました。

小学校クラスや女性のための識字クラスは寺子屋がなければ実施できない重要なクラスで、地域の人びとの学びにとって不可欠です。寺子屋がはじめての「学校」という生徒もたくさんいます。このように寺子屋では教育に最も遠い人びとに教育機会を提供することができています。

例えば、バグワンプール寺子屋では20人の生徒のうち15人が「ハリジャン」という最も低いカーストに属する生徒たちです。小学校に一度も通っていない生徒や一度退学した生徒にとって寺子屋は再び学ぶチャンスを得られる唯一の場所になっています。

寺子屋ではまた、人材育成にも力を入れています。地域の人びとが自ら寺子屋を運営できるよう、寺子屋運営委員や寺子屋の事務職員への研修を継続しています。

さまざまな収入向上活動
「ネパール寺子屋プロジェクト」では、識字クラスの修了者を主な対象に収入向上活動を行っています。野菜栽培、ヤギ飼育、魚の養殖、養蜂、養鶏などの研修を受けることで、学んだ知識や技術を活かして収入アップできることを目指しています。

2011年度は、収入向上や人材育成あわせて、3,983人が研修に参加し、さまざまな技術を身につけることができました。

 

アフガニスタン

プロジェクト名:アフガニスタン寺子屋プロジェクト

  • 実施団体:日本ユネスコ協会連盟アフガニスタン事務所、アフガニスタン教育省識字局
  • 主な対象:子ども、成人男女
  • 非識字率:72%

10年目の寺子屋運動 残る識字のニーズ
30年間にわたる戦争で経済、社会インフラ、教育システムが壊滅的な打撃を受けたアフガニスタン。この地に現地事務所を開設し、世界寺子屋運動を開始してから10年が過ぎました。2011年度、アフガニスタンではこれまでの支援で建てられた13の寺子屋とその周辺地域において、1,940人もの人たちが識字教室に通い、読み書きを学びました。その多くは、学校のない農村地域に暮らす女子や女性たちです。昨年寺子屋ができたばかりのカブール県デルサブス郡のデルヤヒヤ村では、271人の男女が読み書きを学び、識字修了証書を手にしました。また62名が洋裁クラスに参加し、ミシンの技術を学びました。タリバン時代、女子、女性への教育を禁じていたアフガニスタンでは、女性の識字率が未だに34%と低く、特に保守的な農村地域においては、識字率が10%にも満たないところもあります。女性たちが安心して通える民家型の識字教室の普及を来年度も継続します。

麻薬の恐ろしさ 寺子屋の講習会で学ぶ
アフガニスタンは、麻薬の原料となるケシの栽培が伝統的に盛んな国です。今も貧しい農村では収入を得るためにケシ栽培を続ける人たちが少なくありません。この大きな社会課題への取り組みとして、アフガニスタンの麻薬対策省は、各地域を回って、特に青少年に麻薬の恐ろしさを伝える講習会を開いています。2011年12月、カブール県第12地区の寺子屋では、500人の男女を集めて講習会を行いました。子どもたちは2日間に渡って、麻薬が人の体にもたらす害について学びました。

“コーラン”を学ぶクラスが人気
イスラム教の人びとにとっての聖典であるコーラン。このコーランについて学ぶクラスがアフガニスタンの寺子屋で人気です。コーランの朗読や暗唱はもちろん、イスラム教徒としての心得をムッラー(イスラム教に精通している村の宗教指導者)が教えてくれます。コーランを読めるようになりたいという思いから、識字クラスに参加する学習者も多いというアフガニスタン。デルヤヒヤ村の寺子屋では、2012年3月に100名を超える村人が「コーランクラス」への登録を済ませました。

 

*実施団体とは? 実際に寺子屋の建設、運営を行う団体で、国によって異なる。(公社)日本ユネスコ協会連盟が調査し、信頼がおけると判断した現地の団体であることが多いが、同連盟が現地事務所を構え、国の機関をパートナーにして、実施しているプロジェクトもある。

*寺子屋運営委員とは? 村の長老、教育関係者、識字教室の卒業生などがメンバーとなり、現場のニーズに応じたプログラムを企画し、運営方針を決める。また、自立して運営していくための資金集めなども行う。


2012年度支援プロジェクトの計画

“世界寺子屋運動”名古屋実行委員会は、2011年度の3プロジェクトを引き続き支援します。書き損じはがきの回収によって得られた現金や寄付金などから、合わせて450万円1プロジェクト150万円ずつを活用させていただきます。

 

連合愛知から書き損じはがき26,784枚をいただきました

連合愛知(日本労働組合総連合会愛知県連合会)から“世界寺子屋運動”名古屋実行委員会に書き損じはがき26,784枚(120万円相当)の寄付をいただきました。連合愛知からの寄付は今回で22回目、通算326,709枚(およそ1,476万円相当)になりました。
5月8日に行われた贈呈式において、連合愛知の土肥和則事務局長(写真左)から名古屋国際センターの花井理事長に手渡されました。ご協力いただいた皆様にお礼を申し上げます。なお、この贈呈式の様子は5月9日の中日新聞と朝日新聞でも紹介されました。