外国人労働者とともに職場を考える

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今の日本では、外国人と日本人が同じ職場で働くことは珍しくありません。 しかしながら、言葉や文化の違いから情報が不足しがちな外国人は、特に中小企業などで労働災害にあう危険性が日本人よりも高くなっています。 今月は、外国人労働者とともに働く職場を、限られた予算でより安全な場所にするためにはじまった取り組みをご紹介します。

ガードは外国人労働者の手作り。かかった費用は材料費のみ。

参加型労働安全衛生活動
労災職業病を予防するため、現場の労働者が自ら職場を改善する「参加型労働安全衛生活動」。ILO(国際労働機関)が推奨し、これまで発展途上国の炭坑や農場などで実際に採り入れられて、大きな成果をあげてきました。 この活動はいまや、途上国の人々を対象にするだけではなく、自国で働く外国人労働者も対象に含めるようになりました。タイでは、ILOが2010年秋にミャンマーからの外国人労働者向けに試行しました。そして、日本においても、各地で日本人の職場だけではなく、外国人労働者のいる職場で試みがはじまりました。 では、どのようにして、外国人が自発的に職場の改善に取り組むことができるのでしょうか。3月4日に、名古屋国際センターで開催された「外国人・日本人労働者と共に職場の安全を作ることを考えるセミナー」(主催:名古屋労災職業病研究会)で発表された事例からご紹介します。

参加型労働安全衛生活動プログラム(例)

1 自己紹介と導入ゲーム
2 職場改善チェックリスト(職場の改善具体例がイラスト付きで列記されている資料)を見る
3 職場を実際に巡視
4 職場の良い点を3つあげる – 問題点ではなく、良い点を見つけることがポイント!
5 低コストで実現可能な改善を3つ考える
6 他の事業所の改善事例(別に資料として用意されたもの)を見て、よい事例とその理由を発表する
7 職場の改善計画を作成し発表する
(所要時間約2時間、勤務時間内に実施)

 

職場改善アクションチェックリスト(製造業用)

東京都のガラスリサイクル工場にて
東京都江東区にあるガラスリサイクル工場は、ガラスをリサイクルするため、集めたガラスを選別して、カレットと呼ばれる細かなガラスに粉砕しています。工場での労働は厳しく、日本人が定着しない一方、従業員40名のうち外国人は8か国25名になりました。 この会社では、ガラスでけがをする労災事故が連続して発生したため、外国人を対象にした「改善」の活動を取り入れることにしました。16名の外国人が4グループにわかれて、右のようなプログラムを1年間にわたり3回実施しました。

指導にあたった特定非営利活動法人東京労働安全衛生センターの仲尾豊樹さんは、「専門家が法律を基に改善点を指摘するのではなく、現場の労働者が自分の職場のよい点を見出しながら自ら改善点を考えること」にこの活動の特徴があるとし、「参加型であることから職場のコミュニケーションが向上する」効果ももたらされるといいます。 活動後、工場では、機械の回転部分に手を挟まないように自分たちでガードを設置したり、屋上の開口部付近で作業する人が万一落下しても事故にあわないように開口部の下を車通行禁止にするなど、外国人労働者からの提案でいくつもの改善が低予算でなされました。

1年の活動中に労災事故は発生せず、全員が成果を認め、またやりたいと答えたそうです。
仲尾さんは「以前は同じ国同士で集まる傾向がみられたが、活動後は労働者間の風通しが格段によくなった」とコミュニケーション向上の効果も実感しています。騒音や粉じん対策、雇用安定化のための賃金アップ等、費用がかかる今後の中長期的な課題については会社側が引き続き検討するとのことです。

出典:愛知労働局「平成23年愛知の死傷労働災害発生状況(速報版)」

名古屋市の介護施設にて
前述のガラス工場のような危険な職場ではないが名古屋市内の介護施設でも同じ改善の活動が初めて試みられました。
外国人は製造や建築の分野だけでなく、介護の現場でも働いています。

 市内にある高齢者介護施設「グループホームこころ比ひ良ら」では、名古屋労災職業病研究会(労職研)の提案により、ブラジル人職員2名と日本人職員6名が参加しました。 グループホームには認知症を抱える18名が入居し、職員が4交代24時間で対応しています。 改善の活動をすすめるうちに、ここでは働く人のためだけでなく、高齢の利用者の安全のための提案がだされるようになりました。 利用者がよく通る場所にあるカラーボックスの角をクッションで覆ったり、洗濯用スプレー類を利用者の目につかない棚の中に収納するようになりました。ブラジル人職員は、利用者が頭をぶつけてけがをしないように、頭上の非常階段にクッションをとりつけました。

 施設長の河北大介さんは、「職場の改善とあわせて利用者の安全のための改善ができた」と振り返り、活動を通して参加者が職場への思いを共有することにより「言葉の壁があったブラジル人職員への理解が深まった」と感じています。

 

労働災害を起こしてはならない
労災の予防が大切なのは、重大な事故にあえばその日から生活が崩壊する危険性があるからです。セミナーを主催した労職研はこれまで労災にあった人々の支援を主にしてきました。 寄せられる労災の相談で特に多いのは、手指の切断等のけが、アスベスト関連疾患、そしてうつ病等の精神障害、とのことです。昨年の相談件数のうち、外国人は39人で全体の約4割を占めています。特に単純ミスによるけがや事故が多いのが特徴です。 中には、右手の事故から疼痛障害を発症し、しばらく療養したものの日本で再び働くことがかなわず帰国した人、頸けい椎つい損傷により半身不随となり、日本で障害補償年金による生活を余儀なくされた人もいました。労災保険制度を知らない外国人には、労災認定申請から障害年金給付、生活保護給付などの手続きにも支援が必要です。 コミュニケーションが不足し、安全教育が不十分なために起きた事故は、本来防ぐことができたかもしれません。労職研の成田博厚さんは「事故の代償は大きい。職場改善の活動を少しでも減災に役立てたい」と今後は予防活動にも力を入れる予定です。 成田さんによると過去の日本の事例では、活動を繰り返して改善を定着させ、安全で衛生的な職場を創り出すことで、会社の活性化につながる新たな人材を確保できた会社もあるそうです。


近年の労災の相談には、いじめや嫌がらせによるうつ病の相談が多いと聞きました。労災の認定は今のところ因果関係を見極めるのが難しく、認められるのはまだ一部だそうです。 ご紹介した参加型労働安全衛生活動の効果のひとつに職場でのコミュニケーション向上がありました。コミュニケーションのとれる職場であることは減災の第一歩であるように思いました。

 


外国人の労働災害に関する相談先

日本人及び外国人の労災職業病支援に加えて、外国人労災ホットライン等も開催。参加型労働安全衛生活動の指導も行う。