文化や制度の違いを越えて ~通訳者から見える外国人住民が抱える問題

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 多くの外国人住民が暮らす愛知県には、役所をはじめ、住宅、教育、労働など市民の生活に関係の深い様々な機関に通訳者が配置されています。そうした通訳の方々のお話から、外国人住民が抱える問題を探ります。

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<左から、周さん、飯塚さん、神田さん、水口さん>

●●住民にとって最も身近な役所。ブラジル人が多く暮らす豊田市や小牧市での市役所では早くからポルトガル語通訳者が対応していました。名古屋市では、外国人住民が多く暮らす中区に中国語とフィリピノ語、港区にポルトガル語の通訳が配置されています。

名古屋市中区役所 福祉部保険年金課 中国語通訳 周蔚(しゅうい) さん

■仕事内容について教えてください。
おもに国民健康保険に関する通訳や文書の翻訳をしていますが、他の窓口に同行し、様々な手続きの通訳をすることもあります。市民税、転入・転出、児童手当、離婚、市営住宅などについての問い合わせが多いです。区役所だけで対応が難しい内容の場合は、名古屋国際センターなどの外国人に関する総合的な相談窓口を紹介することもあります。

■通訳の仕事を通じてどのようなことを感じますか。
日本で暮らす中国の方には、長く住んでいても日本語を学ぶ機会がなく、日本語を話せない人もいるので、役所の窓口に通訳がいると助かると思います。日本の制度を理解できず問題を抱えることがあります。日本では子どもが生まれた場合、生後14日以内に出生届を出す必要がありますが、それを知らず、届出や国民健康保険の手続きもしないまま、子どもが病気になり、自己負担で10万円以上の支払いを求められるケースがありました。また、国民健康保険を任意だと思っている人は少なくありません。民間会社の生命保険のようなものだと思っている人もいます。「自分は健康で病気はしないから」といって保険料を支払わず、いざ病気になった時に自費で高額の医療費を支払い、「やっぱり入っておけばよかった」と話す人もいます。人々の意識を変えるためには、きちんと説明し、制度を理解してもらう必要があると考えます。
同じ外国人として、彼らが抱える問題に向き合って、皆が楽しく暮らしていけるよう手助けしていきたいと思います。

 


 

●●集合住宅には多くの外国人が暮らしています。また、同じ国から来た人々が近くに集まって住む傾向もあります。  日本人と外国人住民が共に暮らす集合住宅。どのような取り組みがされているのでしょうか。

UR都市機構 募集部門 飯塚清美さん

■仕事内容について教えてください。
UR都市機構の賃貸住宅には、ブラジルなど南米出身の人をはじめ多くの外国人が暮らしています。URは民間のアパートなどに比べ、保証人が必要ない、入居時にかかる費用が少ない、敷金分割も可能など入居の条件が厳しくないため、外国人住民にとって入居しやすいようです。
外国人住民は文化や制度の違いから、ごみの捨て方がわからなかったり、大きな音を出してしまい、近所の住民に迷惑をかけてしまうことがあります。そのため、特にブラジル人住民の多い保見(豊田市)、九番(名古屋市港区)、知立(知立市)、笹川(三重県四日市市)などの団地にはポルトガル語通訳がいます。
私は現在、賃貸住宅の募集の部署で勤務しています。募集にかかる事務や通訳のほか、URに入居しようとする外国人に対し、週1回、説明会を開催し、入居前に団地のルールやごみの捨て方、騒音の問題などについて伝えています。

■通訳の仕事を通じてどのようなことを感じますか
リーマンショックの後は大変でした。仕事がなくなってしまい、1ヶ月に30軒から40軒が出ていくという時期もありましたが、2010年くらいから、一旦、帰国したブラジルの方が戻ってきていると感じます。東日本大震災後も、東北や関東から愛知県に移って来る人がいました。その時々の大きな出来事が入居者の動向に影響しているなと感じます。

 


 

●●多くの外国人にとって日本で仕事を探すことは容易なことではありません。通訳が常駐する外国人向けのハローワーク(公共職業安定所)である名古屋外国人雇用サービスセンター(中区)には、外国人が仕事の情報を求めて訪れます。 名古屋外国人雇用サービスセンター英語通訳 神田 すみれさん

■通訳の仕事を始めた経緯を教えてください。
7年間アメリカに滞在したのち、台湾で2年間、日本語教師をしていました。帰国後、通訳の仕事などを通じて、外国人の方々がどのような背景を持って日本に来たのだろうと考えるようになり、大学院で「人の神田さん移動」について研究しました。在学中から行政書士事務所などで仕事をさせていただき、卒業後はNPOで日本に暮らす外国にルーツを持つ子どもたちのための事業の立ち上げ・運営に携わりました。これらの仕事を通して、日本に暮らす外国人の方々が置かれている状況について学ぶことができました。
現在は、名古屋外国人雇用サービスセンターでの英語の通訳のほか、名古屋国際センターの法律相談や法律事務所でも通訳の仕事をしています。また、自分の暮らす地域で外国人生活相談に関わっています。

■通訳の仕事を通じてどのようなことを感じますか。
雇用サービスセンターでは求人票の翻訳、相談員と求職者との間の通訳、雇用保険の説明会の通訳、問い合わせ対応などをしています。最近、ネパール人の方が多く来ます。また、インドネシアやベトナム、バングラデシュ、ミャンマーなど、これまでに準備していた言語では対応できない人が増えているなと感じます。英語を話せない人もいるので、その場合はわかりやすい「やさしい日本語」で対応しています。
日本語ができる人に比べ、日本語能力の乏しい人は多くの問題を抱える傾向があると感じています。仕事を見つけることが容易でないだけでなく、情報を得ることも難しく、トラブルがあったとしてもそれを自分で解決することがなかなかできません。精神的に追い込まれてしまう人も増えていると思います。様々な問題を抱える相談者が本当に困って訴えたいこと、本質を聞き出すためには、ソーシャルワークの技法のほかに、信頼関係を築くことが必要だと思います。また、法制度などは変更されることがあるので、学び続けなければなりません。これからも必要な知識を学び、より的確に、そして相手に寄り添った対応ができるようにしていきたいと思います。

 


 

●●愛知県には外国につながる子どもたちが多く暮らし、公立学校で学んでいます。県教育委員会は、高校に生徒の母語に堪能な外国人生徒サポーターを配置し、生徒の学習活動や学校生活等を支援しています。

外国人生徒サポーター 水口 グッドフレッドさん

■通訳の仕事を始めた経緯を教えてください。
中学2年生の時にフィリピンから来日しました。当時は日本語が全くわからなかったため、学校で特別に日本語を教えてもらっていました。その後、定時制高校に入学し、一生懸命勉強して、3年で卒業しました。高校卒業後はフィリピンに戻り、ミンダナオ国際大学日本語専門課程で日本語や日本の歴史、文化などを学びました。  2011年に再来日した後、豊田市にあるNPOが作成した「外国につながる子どもたちの進路開拓ガイドブック」のフィリピノ語版の翻訳に携わりました。2012年から外国人生徒サポーターの仕事をしています。

■外国人生徒サポーターの仕事について教えてください。
愛知県内の全日制と定時制の県立高校で外国人生徒のサポートをしています。全日制と定時制では、生徒の日本語能力に差があるため、サポートの内容が異なります。全日制では、取り出し授業で生徒の隣に座り、わからないところがあれば教えるほか、テスト前の学習も支援しています。定時制では、生徒の日本語レベルが学習内容に達していないこともあるため、内容をフィリピノ語に訳して教えることが多くなります。いずれも高校の勉強を教えることになるので、自分で前もって勉強したり、翻訳して臨んでいます。また、わからない所は教科担当の教師に確認してから教えています。生徒からは、学習だけでなく、進路や学校生活に関する相談を受けることもあります。
まず、生徒がテストで不合格にならずに進級できるよう導くことが自分の責任だと思っています。この仕事は「生徒と先生のかけはし」となること。生徒のために今後も努力していきたいと思っています。

* * *

外国人住民が抱える問題は、様々ですが、日本語ができない、日本の制度が分からないことに起因するものが少なくありません。通訳者は、単に日本語を外国語に、外国語を日本語に変えるだけでなく、文化や制度、考え方の違いを踏まえて、正しく情報を伝える役割を担っています。そのためには、制度について正確に理解していなければならず、通訳の方々の日々の努力があってこそ、正しく情報を伝えることができるのだと感じました。

 

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