高齢化と外国人 ~誰もが安心して老後を迎えられる社会を~

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日本に定住する外国人の高齢化が少しずつ進んでいます。今月号では、その現状と今後取り組んでいかなければいけない課題について考えてみます。

<マダンの利用者と子どもたちとの交流の様子>

●自分たちの文化や風習を生かせるコミュニティを
特定非営利活動法人コリアンネットあいち(名古屋市北区)は、高齢になった在日コリアンの人たちが自らのアイデンティティを守り、少しでも安らぐ場所を提供したいとの思いから、2003年、在日コリアンのためのデイサービスセンターの運営を始めました。現在は名古屋市北区と瀬戸市、東海市で「マダン」(朝鮮・韓国語で「広場」の意味)と呼ばれるデイサービスセンターを運営しています。

現在、在日コリアン1世の多くは80代以上、2世が65歳以上という年齢を迎えています。老々介護や独居といった高齢者特有の問題のほか、彼らにはことばや文化、年金の壁が立ちはだかっています。
デイサービスセンターを始めた当時、在日コリアン1世の方のなかには、認知症の影響で母語がえりをし、日本語しか話せない家族とコミュニケーションが取れなくなってしまった方々がいました。その方々がマダンに来ることで、とても生き生きされ、家族から感謝されたことが何度かあったそうです。マダンは1世の方にとって、ことばや文化の問題を取り払い、自分たちのアイデンティティを大切にできる場であると言えます。このような在日コリアンのためのデイサービスセンターは、愛知県だけでなく全国各地に開設され、そして、施設では2世、3世のスタッフが働き、高齢者をサポートしています。

もうひとつの大きな問題が年金です。1982年まで、国民年金保険には日本国籍を持つ者に限るという国籍条項があり、在日コリアンの人々は同年まで国民年金に加入することができませんでした。その後、国籍条項が撤廃されても、依然として在日コリアン高齢者のなかには、制度的無年金者*1が多くいます。また、厚生年金や共済組合については加入することができたものの、自営業や零細企業に勤めざるを得なかったり、いずれ帰国するなどの理由により年金保険料を支払わず、年金を受給できない人も少なくありません。高齢となって仕事がなくなり、年金をもらえないために生活保護を受ける。そのような状況が多くあるといいます。
同団体の金順愛(きむ すね)さんは「年金、介護制度、人材確保、利用者の減少など問題はいろいろあるが、一般の施設と同じようにサービスを提供することはもちろんのこと、自分の文化や風習を生かせるコミュニティとしてのマダンの特徴を出していきたい。そして、日本人にとっても利用したい場所にしていきたい」と話し、マダンで出されるコリアン家庭料理のレシピ集の発行や地域での交流イベントにも取り組んでいます。

*1制度的無年金者  1982年に、国民年金保険の国籍条項が撤廃されたが、その当時、35歳を超えていた人は25年の年金加入期間を満たすことができない状態となった。その後、1986年の年金制度改革で「カラ期間」(老齢基礎年金などの受給資格期間をみる場合に、期間の計算に入れるが、年金額には反映されない期間)の制度がもうけられたものの、金額的な救済はなく、また、その時点で60歳を超える者にはこの「カラ期間」も認められなかったことから、年金制度から完全に排除され、無年金状態となった。1982年時点で20歳以上の障害を有する外国人もまた、障害基礎年金、障害福祉社会年金の受給資格が得られなかった。

●安心して多言語で最期を迎えられる社会を

静岡県浜松市には2万人を超える外国人が暮らしています。そのうち65歳以上は約700人(平成24年10月時点)。要介護認定を受けている人は70人を超えています。日本での定住化が進めば、高齢化により、病気になり、亡くなる外国人も増えます。孤独死や認知症などの問題は国籍を問いません。「外国人の子どもの教育について考えるように、介護や埋葬、墓地など、外国人の生老病死と高齢化に伴う問題も考えていく必要がある」と、一般社団法人グローバル人財サポート浜松の代表理事堀永乃(ほりひさの) さんは言います。

<訪問介護員2級研修の様子。受講者の隣にはボランティアの介護福祉士や大学生が寄り添う>

同団体では、多様な人財が活躍できる社会づくりを目ざし、外国人が安心して最期を迎えられるよう、外国人の介護者を育成する取り組みを行っています。2011年度から、訪問介護員2級講座(2013年度からは介護職員初任者研修)を開催し、ブラジル人、ペルー人、フィリピン人、日本人の受講者が学んでいます。講座では、外国人受講生のためにわかりやすいオリジナルの解説本を用意して、介護の現場で必要となる日本語学習のサポートや報告書の記録の作成方 法も指導しています。講座修了生の就職率は100%。これまでに40人以上の外国人の就労サポートを行い、21人が訪問介護員2級の資格を取得し、介護福祉施設や障がい者支援施設、病院などで勤務しています。明るく、利用者への声かけも積極的な修了生に対する評価は高く、また、外国人利用者と意思疎通ができることから、それまでコミュニケーションを取ることに苦慮していた日本人スタッフや施設にとってもよい効果を生み出しています。施設では、外国人スタッフにも伝わるように丁寧な業務指示をするように工夫しており、その結果、スタッフ同士のコミュニケーションが豊かになり、日本人にとっても働きやすい職場環境になっていったそうです。
堀さんは「生まれてから亡くなるまでサポートするのが生活支援。多言語で介護が受けられることによって、外国人利用者も家族も安心して生きることができるようになります。介護サービスも充実すれば、誰にでも優しい地域社会と言えるのではないか。外国人も日本人と同じように資格を取得して活躍できる社会、そして彼らの存在によって外国人が多言語で最期を迎え入れることのできる社会の構築を目ざしていきたい」と話してくれました。

 

●中国帰国者の高齢化~介護に伴うことば・文化の問題

第2次世界大戦後、中国に残ることになった「中国残留邦人*2」(以下、「1世」)のうち、日本に帰国した人を「中国帰国者」と呼びます。1世の人々だけでなく、子(2世)や孫(3世)などの親族も来日し、日本で生活をしています。

<教室での授業の様子>

高齢の中国帰国者1世が向き合う基本的な問題は一般の日本人の高齢者と同様ですが、それに加え、彼らもまた、ことばや文化に起因する問題を抱えることがあります。訪問介護でヘルパーを受け入れるにしても、中国語がわからず、食文化をはじめ文化的背景が異なる日本人ヘルパーを自宅に受け入れることは容易なことではありません。通所介護、施設入所も同様です。また、中国帰国者夫婦のうち、日本語ができる人が亡くなり、日本語が不自由な人が残された場合、身体が健康であったとしても、生活していくのに困難な状況を伴います。帰国者専用の介護施設を作ってほしいとの要望がありますが、実現は困難な状況です。
彼らが地域で自立し、生きがいをもって社会参加ができるよう、日本語学習支援や相談事業を行っている東海・北陸中国帰国者支援・交流センター(名古屋市東区)の加藤弘志さんは「介護を提供する職員の中に中国語ができる人がいる、または、中国帰国者の子や孫世代を採用して、ことばや文化の問題を少しでも改善できる方向に進めば、状況は良くなると思う」と話します。同センターでは、2世・3世を対象とした医療と介護に関する知識と日本語が学べる講座の開講を予定しているほか、支援相談員や自立支援通訳を対象とした医療通訳研修を実施して、支援体制を整えていきたいと考えています。

*2 中国残留邦人  昭和20年(1945年)当時、中国の東北地方(旧満州地区)には、開拓団など多くの日本人が居住していたが、同年8月9日のソ連軍の対日参戦により、戦闘に巻き込まれたり、避難中の飢餓疾病等により、その多くが犠牲となった。このような中、肉親と離別して孤児となり、中国の養父母に育てられたり、やむなく中国に残ることとなった人々を「中国残留邦人」という。

* * *

今回、3つの団体にお話をうかがいましたが、国籍にかかわらず、「ことば」「文化」という共通した「課題」をはらんでいると感じました。これに対して、外国にルーツをもつ人々によるサポートが、外国人高齢者の不安を取り除くだけでなく、支援する側も生き生きと働ける場を創出できるのではないでしょうか。  名古屋国際センターにおいても、配偶者の病気や介護、死亡後の手続きについての相談が増えてきています。これまでは労働や税金といった働ける世代の問題やその子どもの世代の育児・教育といった問題が多くありましたが、定住する人々の増加と共に、高齢化、介護、医療といった問題が増えていくと思われます。社会の状況に合わせて、外国人住民に必要な情報を伝えていきたいと思います。

 

*特定非営利活動法人コリアンネットあいち  http://www.kn-aichi.or.jp/
*一般社団法人グローバル人財サポート浜松  http://www.globaljinzai.or.jp/
*東海・北陸中国帰国者支援・交流センター  http://www.ai-kou.or.jp/

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