ユネスコ世界寺子屋運動 2015年度活動報告

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名古屋国際センターは、1990年から“世界寺子屋運動”名古屋実行委員会の事務局を担い、「書き損じはがきキャンペーン」(詳細は裏表紙)を通じて資金を集め、途上国の識字教育支援を行っています。こうした支援が、現地でどのように役立てられているのかを、3つのプロジェクトの現場から報告します。

文・写真提供:(公社)日本ユネスコ協会連盟

 

【アフガニスタン】
・非識字率:26%

terakoya2015_afghanistanアフガニスタンは旧ソビエトによる侵攻、軍閥同士の内戦、タリバン政権による抑圧、アメリカ軍による空爆など悲劇的な歴史を経験してきました。そのため、学校などの教育システムが破壊され、経済的にも厳しい状況が続いています。
アフガニスタンの成人識字率は、アフガニスタン国家教育戦略プラン( 2015~2020 )の推定では26%( UNESCOカブール事務所の推定では31% )。政府は、2021年までに識字率を60%にまで引き上げようとしていますが、最近はタリバンをはじめISIS系組織の活動が開始され、さらに治安が悪化しています。
このため政府の努力のみでは、文字の読み書きの課題の改善は不可能で、継続的な国際的支援が必要とされています。

●アフガニスタンで15軒目の寺子屋が完成!
カブール西部のパグマン郡バボ村に15軒目の寺子屋が完成。12月5日に開所式典が盛大に行われました。教育省や識字局などの政府関係者や地元の人びとなど約100人が参加しました。バボ村のあるパグマン郡は、カブール市の中心部から約20km。カルガ湖というカブール市民の憩いの場が近くにあり、夏場は避暑地としてにぎわう場所です。他方で寺子屋のあるバボ村の人口は2,400人で識字率は約50%あまりという低所得者の住む所。
新しい寺子屋の近くでも多くのクラスを展開しました。バボ村寺子屋では今後、識字クラスや職業訓練などを通じた地域住民の生活向上を目指すとともに、地域の人びとにも積極的に寺子屋運営に参加してもらえるように活動を進めていきます。

●識字クラスを継続実施
2015年度は、カブールとバーミヤンを中心に、35クラスで898人が9か月間の識字クラスを修了することができました。主に公用語であるダリ語を学びました。女性の教育に熱心でない地域でもクラスが開催できるよう、地域の長老や宗教指導者を巻き込んで識字の重要性を啓発しながら事業を進めています。参加者のモチベーションを高めるために料理教室を開催するなどの工夫をしている寺子屋もあります。

●識字クラスの先生をトレーニング
識字クラスの実施前には、アフガニスタン教育省識字局と協働で教員研修を実施しました。大人(15歳以上)に読み書きを教えるための教授法、識字教員に必要な資質、レッスン計画などを2日~5日間かけて学びました。研修の最後には自らのレッスン計画も作成しました。

 terakoya2015_afghanistan2ファティマさん(16歳)
「シャラク・モハマディ※の人びとと女性に識字教育を受ける機会をくれて皆さんに心から感謝しています。以前は字の読み書きができませんでしたが、今では読んだり書いたりできるようになりました。」   (※地名)

 

【カンボジア】
・非識字率:77%

terakoya2015_cambodiaカンボジアでは、1970年代から20年以上にわたり内戦状態にありました。特に1975年4月から3年8か月続いたポル・ポト政権下では、全ての教育が禁止されて多くの知識人も虐殺されたため、教育のための施設・教材・人材が失われてしまいました。政情が比較的安定している近年では、経済成長の一方で貧富の格差が深刻です。農村地域では、貧困や学校が近くにないなどの様々な理由で、小学校を中途退学してしまう子どもたちが未だ発生しています。教育を受ける機会が得られず大人になった人は、読み書きなどが出来ず、良い仕事に就けないために貧困から抜け出せない、自分の子どもにも教育を受けさせることができないという負のサイクルに陥ります。

●カンボジアで14軒目・15軒目の寺子屋完成
2015年度はシェムリアップ州ポック郡、同アンコールチュム郡の2か所に新しい寺子屋を建設し、全部で15軒になりました。”世界寺子屋運動”名古屋実行委員会はじめ全国の皆さんのご支援を受けたアンコールチュム郡スレ・クバーブ寺子屋は、2016年3月、教育省などから来賓を迎え、約600人が集まり、盛大な開所式を行いました。

●重要課題:非識字と子どもたちの中途退学をなくす
15歳以上の大人が対象の「識字クラス」は、12軒の寺子屋20クラスで行いました。493人が8か月間学び、80%にあたる396人が修了試験に合格し、読み書きや計算能力を身に付けました。
将来の非識字者を生まないため、小学校を中途退学した子どもたちの「復学支援クラス」も継続しています。このクラスには2年間で小学校相当の内容を学び、試験に合格すると中学校に進める仕組みがあり、公教育への橋渡しを担います。7軒の寺子屋で10クラス開き、10~16歳の生徒たち244人が学びました。
また、引き続き3~5歳児を対象とした「幼稚園クラス」も実施。小学校での中途退学率を低くするように努めています。昨年度は8軒の寺子屋で10クラス行い、233人の子どもたちが歌や遊びを通して、学ぶ習慣に親しみました。

●新規「進学支援プログラム」:寺子屋から義務教育修了につなげる
カンボジアでも日本の小・中学校にあたる9年間が義務教育ですが、中学校を卒業する子どもの率を高めようと、「進学支援プログラム」を始めました。寺子屋の「復学支援クラス」から中学校に進んだ生徒100人を対象に、制服、学用品、自転車(修理含む)の支給と合わせ、生徒たちの出身寺子屋スタッフの定期的な面談も行い、中学校からの中途退学を防ぐよう見守ります。

terakoya2015_cambodia2チェン・ラシンさん(11歳)
「将来の夢は、お医者さんになってみんなの病気を治すことです。」

 

terakoya2015_cambodia3ルオ・ニーさん(12歳)
「復学支援クラスは、私の夢をかなえてくれます。」

 

terakoya2015_cambodia4メウク・マイさん(10歳)
「将来の夢は、警察官になって僕の住む村や国の人たちを守ることです。」

 

【ネパール】
・非識字率:64%

terakoya2015_nepalネパールは北部を中国に、東西および南部をインドに囲まれた内陸国です。北側にはヒマラヤ山脈がそびえており、山が非常に多い地域です。そのため、インフラ設備や輸送などに課題が多く、経済発展にも地域格差が見られます。地域によっては特産品を首都のカトマンズに運ぶことさえも困難な状況です。また、マオイスト(共産主義者)による内戦やその後の政治的な混乱も経済発展を阻害する要因になりました。また、昨年の4月25日に発生した大地震によって大きな被害を受けました。
現在、ネパールの成人識字率( 15歳以上)は推定で64%であり、男性識字率76%に比べて、女性識字率は53%とギャップが大きく、女性への識字クラスを中心に活動しています。

●識字能力定着のためのポスト識字クラスの実施
2015年度は、3か月間の中級識字クラスを実施し、1,937人(女性が1,847人・約95%)が受講しました。このクラスはネパール政府が実施した大々的な識字キャンペーンである「ネパール識字ミッション( 3か月間のクラス)」のフォローアップとして実施しています。これによってネパール語の読み書き・計算の定着だけでなく、公衆衛生や女性の権利などについても学ぶことができました。クラスの開始前には、識字教員への教授法の研修も行い、識字クラスの質の向上にも努めました。

●学校に行けない子どもにクラスを!
プロジェクトでは、学校に行ったことがない子どもと中途退学した子どもを対象に寺子屋で小学校クラスも実施しています。2015年度は15クラスで295人が学ぶことができました。
学校が近くにない子ども、公立学校に戻るには年齢が高すぎる子ども、制服代などが負担になっている子どもなどにとって、寺子屋や民家での授業は非常にアクセスしやすく、女子、イスラム教徒、ダリット(カースト制で最下層の人びと)など教育の機会に恵まれない子どもたちが多く参加しています。3年間のカリキュラムを修了すると、6年生(日本の中学校1年生相当)に進学する資格を得ることができます。

●寺子屋の自立に向けて
プロジェクトでは寺子屋の持続的な発展のため、各寺子屋が独自の収入を得ることができるように「ソーシャルビジネス」を継続実施しました。有料の裁縫クラス、インターネット接続サービス、魚の養殖、スパイスづくり、結婚式などで使われるテントや食器類の貸し出しなど多様な収益活動を始めています。年間で数万円の利益を上げている寺子屋も出てきています。

terakoya2015_nepal2サジタ・カトゥンさん(テヌハワ寺子屋小学校クラス2年生)
「私はテヌハワ寺子屋で行われている小学校クラスに通っています。授業を受けて、算数の問題が解けるようになりました。いつもこのクラスに出席しています。問題がわからないときには、先生に質問しています。このクラスに通うことができてとても嬉しいです。」

 


 2015年度支援プロジェクトの実績

書き損じはがきの回収によって得られた現金や寄付金などからカンボジア、アフガニスタンに各250万円、ネパールに150万円、あわせて650万円を活用させていただきました。“世界寺子屋運動”名古屋実行委員会は、2016年度も3か国3つのプロジェクトを引き続き支援していく予定です。

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