ブラジル人学校から子どもたちの姿が消えた


~不況の影響で学校に通えなくなる子どもたちが急増

ブラジル人学校とは
ブラジル人学校は、授業カリキュラムや使用言語、学校内の生活等において本国の学校とほぼ同様です。ブラジル政府に認可されたブラジル人学校に通えば、本国に帰国し編入学する際に、編入試験が免除されこともあり、将来的に本国への帰国を決めている児童生徒にとっては、公立学校よりもふさわしい教育環境であると言えます。2006年に総務省が発表した「地域における多文化共生推進プラン」のなかに、外国人学校の法的地位の明確化として、各種学校及び準学校法人の認可基準の緩和を検討するよう謳われたこともあり、こうした学校として認可を受けたブラジル人学校もありますが、日本ではいまだに多くは正式な学校と認められておらず、公的な助成金を受けていません。また、ブラジル政府の認可を受けた学校でも、同国からの財政面等の支援はありません。そのため、学校の経営自体が厳しく、また学校運営のためのすべての費用を月謝でまかなうため、公立学校と比べ学費は非常に高く、保護者の負担も大きいと言えます。

 

2年生のポルトガル語(国語)の授業

名古屋市にある唯一のブラジル人学校
名古屋市港区にあるブラジル人学校コレージオ・ブラジル・ジャパンは、2006年に設立され、平成22年3月20日現在、ブラジルの小学部・中学部にあたる6歳から14歳までの生徒31名が学んでいます。1年生から5年生(6歳から10歳)は、1クラスに担任教師が1人、6年生から9年生(11歳から14歳)は教科によって担当教師が変わります。教科書はブラジルから取り寄せており、授業科目はポルトガル語、算数・数学、理科、歴史、地理、美術の主要科目のほか、学芸科目として日本語、英語、体育などがあります。授業のほかに、隣接する老人ホームや港防災センターを訪問し、地域の人々との交流や防災等に関する取り組みも行っています。学費は生徒一人あたりひと月約2~3万円、そのほかに、教材費、制服代、送迎代が必要です。篠田カルロス校長は、「本校に通う生徒は、将来的にブラジルに帰国する生徒たちであるが、日本語だけでなく『日本を学ぶ』ことが重要だと考えている」と教育方針を話す一方、「生徒数は、2007年に60人、2008年に85人であったが、2009年に40人、現在は31人と減った。学費の滞納額が数百万円になることもあり、経営がとても厳しい」と訴えました。また、最近は生徒から「公立学校には行きたくない」や「学校で勉強できなくなるのが怖い」と言った声が聞かれるそうです。


減り続ける生徒数とその理由

在日ブラジル人学校協会によると、全国のブラジル人学校数は、2010年1月現在、83校あり、2008年に比べると10校減っています。また、文部科学省の「ブラジル人学校等の実態調査研究結果」(2009年)によると、全国のブラジル人学校に通う生徒数が、2008年の6,373人から2009年には3,881人になり、約40%減となりました。学校に通わなくなった理由として、約40%が「本国に帰国」、約35%が「自宅・不就学等」、約10%が「公立学校へ編入」、約3%が「他のブラジル人学校等へ転校」と続きます。さらに、「愛知県内のブラジル人学校に対する調査」(愛知県、2010年)によると、県内のブラジル人学校の総生徒数は、2010年2月現在、1,167人になり、2009年から14%減、さらに2008年と比べ56%減となりました。

「虹の架け橋教室」がスタート
文部科学省は、不就学・自宅待機となっている定住外国人の子どものための就学支援の一つとして、日本語指導等を行う「虹の架け橋教室」をスタートしました。これは、公立学校への転入を円滑にすること、子どもたちの教育の機会を失わないようにすることを目的としています。2010年4月現在、自治体やNPO、企業など、全国39団体により進められています。
そのひとつ、愛知県豊川市は、今年1月から日本語教室を行っており、現在、市内のブラジル人児童11名が通っています。不就学や不登校の状態にある子どもだけでなく、公立学校に通いながら授業後に参加する子どももいるそうです。教室は、クラス形式とマンツーマン形式があり、日本語指導のほか、算数や漢字など教科指導も行っています。同市国際課の白木賢次さんは、「この教室に1月から通っていた就学年齢前の子ども4名が4月に公立の小学校に入学した。そのうち3名が今もこの教室に通っている。まだ始まったばかりで手探り状態だが、明るい兆しだと受け止めている」と語りました。

いま、外国籍の子どもたちのなかには、「学校に行きたくても行けない」、「公立学校に編入したが、日本語の壁で授業についていけない」、「学校環境にうまくなじめない」などの理由で苦しんでいる子どもがたくさんいます。彼らが自信や夢を持てるようサポートする仕組みづくりや人材育成が求められています。

 NICでは、ブラジル人をはじめとする外国籍住民が多数暮らす名古屋市港区九番団地において、「夏休み子ども日本語教室」や学区内の小学校トワイライトスクールでの学習支援、また、外国籍児童・生徒と携わる人々を対象に、教育現場で必要な知識を学ぶ「外国籍児童生徒サポーター養成研修」を行っています。さらに、平成22年度からの新規事業として、保護者への家庭教育に関する情報提供および保護者同士の交流を行う「日本で子育てをする家庭のための教育サロン」、外国籍児童のサポートに携わる人々のネットワーク「東海外国籍子どもサポート連絡会」を始めました。


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参考資料
・文部科学省 http://www.mext.go.jp/
・愛知県 http://www.pref.aichi.jp/
・国際移住機関 http://www.iomjapan.org/index.cfm
・「日本の中の外国人学校」 月刊『イオ』編集部 2006年11月10日発行

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