外国人法律相談にみる国際離婚

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 平成22年度の名古屋国際センター(NIC)外国人法律相談で最も多かったのは労働相談を抜いて離婚相談でした。母国を離れて、日本でいったんは家庭を築いたものの、様々な理由から離婚することになると、これまでの日本での安定した生活は一変します。今月号では、国際離婚にどのような問題があるのかお伝えします。

件数は年々増加

 日本における国際離婚(外国人を含む夫妻の離婚)は年々増加し、平成 21年は 2万件を超え、離婚件数全体の約 1割を占めました(表 1)。また、この割合は、婚姻におけるものよりも高い結果となっています。これは、日本人同士のケースよりも、年齢差、文化の違い等が大きいためと推測されます。

(表1)離婚件数と割合

総数      255,092 (100.0%)
夫妻とも日本 233,949 (91.7%)
夫日本・妻外国 15,570 (6.1%)
夫外国・妻日本  3,834 (1.5%)
夫妻とも外国  1,739 (0.7%)
(厚生労働省平成21年人口動態調査から抜粋)

国際離婚の難しさ

 愛知県弁護士会の国際人権部会に所属し、外国人事件やNIC外国人法律相談を担当している宮崎真(しん)さんは、離婚の相談では、「当面の生活の確保、事実関係の把握、親権や養育費の希望、在留資格 * 1の各方面において、問題の所在を明らかすること」から始めています。
 国際離婚をする組み合わせは、外国人と日本人、異なる国の外国人同士、同じ国の外国人同士とさまざま。日本人同士と異なるのは、離婚の手続きを「どこの国の法律を適用するのか、どこの国の裁判所で手続きをするのか」という基本的なことから判断しなくてはならない点です。日本では、法の適用に関する通則法(通則法)及び国際裁判管轄 * 2により、一般的には、日本人との結婚でも、外国人同士の結婚でも日本の裁判所での手続きが可能です。しかし、外国人の場合は、原則として本国法に従って離婚すべきであるため、日本で離婚 * 3できても、その結果が自分の国で認められるかどうかわかりません。
 さらに宮崎さんは「子どもの親権 * 4については一層深刻」と指摘し、「外国では共同親権を認めることも少なくなく、日本の単独親権の考え方そのものに納得できないことや、離婚で在留資格を失う外国人の親は、子どもが国籍を問わず日本人の子である場合、子どもをおいて日本を離れると子どもと会うことも困難になり、他方日本人の子の扶養者 * 5であれば在留が認められることから、争いが長期化しやすい」といいます。裁判による離婚となれば、時間と費用がかかり、家族や知人の少ない外国人の親は多大な困難を強いられます。
 宮崎さんは、相談者に、「離婚後の生活像をイメージして、自立のためにできることを考えておいてほしい」とアドバイスするとともに、離婚には日本と外国双方の法的知識が必要なことから、早めに専門家の相談を受けるように勧めています。

宮崎 真さん 

フィリピン人の相談では

 名古屋市瑞穂区で行政書士事務所を開業している佐野実哉(じつや)さんは、名古屋地域でフィリピン人を支援するボランティア団体である中部フィリピン友好協会から在留資格や結婚・離婚などの相談を受けています。
 フィリピン人女性から、日本人男性と再婚するために、長年本国で別居していたフィリピン人夫との離婚について相談がありました。
 カトリックの国であるフィリピンは離婚が難しく、再婚のために正式な離婚手続きが必要な場合は、婚姻を無効にする申立てを現地の裁判所にしなければなりません。佐野さんは「フィリピン人の弁護士が日本にはいないため、情報も限定的で、本人が帰国して手続きをせざるをえない状態は残念」と感じています。
 また、フィリピン人の離婚相談では、日本人夫とフィリピン人妻の離婚相談が多いのも特徴です。離婚の合意がされないまま、離婚届を日本人夫から一方的に出されてしまった事例がありました。佐野さんは、「離婚届は当事者のサインがあれば受理されてしまうため、書類の意味がわからずサインしてしまった人が取り消しを求めて相談に来る」といいます。協議離婚を無効にするためには裁判所で無効確認調停を申し立てることができます。
 申立てに必要な費用は主に 1,200円の収入印紙代だけですが、日本語が不十分な外国人妻にとって低いハードルではありません。無料で何度も通訳を引き受けてくれる知人を探せるか、在留期限までに調停を終えられるのか、といった問題があるからです。佐野さんは弁護士の協力を得ながら、対応にあたります。
 「立場の弱い外国人配偶者は、離婚を考えているなら、離婚をする前に相談すること」が、自分の将来の生活設計をするうえで助けになります。

佐野 実哉さん

ポルトガル語法律相談では

 静岡県弁護士会に所属する外国法事務弁護士 * 6の石川エツオさんは、在名古屋ブラジル総領事館(名古屋市中区)で月に 2回、静岡県磐田市の磐田信用金庫で月に 4回、ポルトガル語の無料法律相談を担当しています。
 ポルトガル語の法律相談では、「リーマンショックの後に、共同経営の解消や自己破産などの経済的な相談が急増したものの、相談内容の中では離婚相談が半数を占めていた」とのことです。ブラジル人の離婚相手は日本人やブラジル人だけではなく、ペルー人、フィリピン人、ロシア人、イラン人、アメリカ人、中国人等さまざまです。
 ブラジルは国籍離脱の手続きが厳しいため、結果として、日系ブラジル人の中には日本とブラジルの二重国籍者が少なくありません。その結果、例えば、二重国籍の日系ブラジル人妻とアメリカ人夫の間で日本で日本法に従って裁判離婚できても、日本、ブラジル、アメリカの三重国籍者である子どもの将来をどうするかについて、深刻な話し合いが必要となるケースもあります。
 また、共同親権の国であるブラジルでは、「ブラジル人同士の子がいる夫婦の離婚」は裁判による離婚でなければ認められません。日本の裁判所でブラジル法により数年間かけて離婚に至ったとしても、その結果を本国の連邦高等裁判所が認めるかどうかは、あくまで本国側の判断となります。
 「ブラジルでの裁判が少しでも容易になるように」と考える石川さんは、現在、ブラジルの外務省や弁護士会とともに、在外ブラジル人が本国の弁護士の情報を入手しやすくするプロジェクトを進めています。「インターネットやスカイプ等の通信手段を使えば、現地の弁護士と電話相談をすることも夢ではない」とプロジェクトの実現に期待をかけます。
 石川さんは、離婚の相談者の話を聞きながらも「夫婦でよく話し合ってみること」「子どものことを第一に考えてほしい」とも言い添えています。

石川 エツオさん

      *
 国際離婚により、日本でひとつだった家族は国境を越えて、ばらばらになるかもしれません。日本で生活を続けるのか、帰国するのか、子どもの親権や教育をどうするのか、など重大な選択もせまられます。
 外国人法律相談などの機会を利用して、専門家にできるだけ早く相談し、解決への糸口を見つけてほしいと思います。

NIC外国人無料法律相談
毎週土曜日  10: 00~12: 00 英語・ポルトガル語・スペイン語・中国語 電話052-581-6111(要予約)
在名古屋ブラジル総領事館での法律相談は、 http://www.consuladonagoya.org/japones/(ポルトガル語)で確認してください。

(参考)
政府統計の総合窓口  http://www.e-stat.go.jp/
裁判所公式サイト  http://www.courts.go.jp/
『毎日新聞』2011年5月23日朝刊「社説:ハーグ条約加盟子供の利益を前提に」

 *1外国人が日本に入国・在留するためには、「在留資格」の取得が必要。在留資格(27種類)により、日本で活動できる範囲や滞在期間が定められている。「人文知識・国際業務」のように仕事に関するものと、「日本人の配偶者等」のように身分に関するものがある。
*2通則法第 24条で、婚姻と離婚の効力は、夫婦の本国法、夫婦の常居所地法、夫婦に最も密接な関係がある地の法、の順に適用するものとしている。国際裁判管轄とは、国際的な民事紛争についてどのような場合に日本の裁判所が管轄権を有するかを定めたもので、民事訴訟法第 4条で日本に住所がある人は日本の裁判所に訴えを起こすことが可能。
*3外国人同士の離婚の種類は、平成 21年の人口動態調査によると、協議離婚 85%、調停離婚 12%、判決離婚 1.8%の順になっている。
*4国際離婚後の子どもの扱いについて定めたハーグ条約(正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」)に日本も 2011年 5月に加盟の意思を表明した。
*5 1996年 7月 30日の法務省入国管理局の通達により、日本人の実子を扶養する外国人親に「定住者」の在留資格が認められている。
*6外国法事務弁護士とは、外国の弁護士で、日本の法務大臣の承認を経て日本弁護士連合会に登録した人のこと。日本の弁護士資格はなく、日本の裁判所で訴訟代理人になることはできないが、日本で行われる国際仲裁事件の手続きでは、代理人として活動できる。2011年 5月 1日現在で登録者は 360名。

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