~国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2010」~
8月21日から10月31日まで、愛知芸術文化センターを含む市内各所で開催される国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2010」。この芸術祭では、現代美術、パフォーミング・アーツ、映像などの様々なジャンルから、国内外130組を超えるアーティストが作品を披露します。今回は、愛知県文化情報センターの学芸員で、この芸術祭の映像を担当する越後谷卓司さんとパフォーミング・アーツ担当の唐津絵理さんに、この国際的なイベントの魅力を伺いました。
越後谷卓司さん(映像担当)
映画はしばしば、異なる国の文化をうかがい知る“窓”に例えられますが、これは映像というメディアにはその国の生活や習慣、風俗などが、もっとも分かりやすく反映する、という特徴があるからだといえるでしょう。
今回上映する作品の一つに、ジョナス・メカスの『リトアニアの独立とソ連邦の崩壊』(2008年) があります。これは、リトアニア出身で現在ニューヨークに在住するこの作家が、89 年から91 年に掛けてのベルリンの壁崩壊から東欧諸国の独立、ソ連邦の崩壊という社会的な動きを、故国リトアニアの動向に焦点を当ててまとめた一種のドキュメンタリーといえるものです。しかしながらこの作品では、彼自身が現地に飛ぶといった劇的なアプローチは一切とらず、ニューヨークの自宅で観ているテレビのニュース映像のみで構成してしまったという、異色の作品になっています。しかし、じっくり観ていると、この作品からは、故国の独立という歴史的な出来事が起こりつつあるのに、現場に立ち会うことが出来ない、そのことゆえに、かえって故郷への複雑な思いを伺うことが出来る、といったニュアンスも感じられるのです。
こうした異色作とも呼べる作品は、通常、映画館で上映されることはほとんどありません。しかしトリエンナーレという特別な場において、映像といえばほとんど劇映画やドラマを思い浮かべる方が、こうした作品に触れるとしたら、それは強烈な体験となるに違いないでしょう。それは、映画を通じて異なる国の文化を知るという体験とはやや異なるので、違和感や反発を覚える方がいるかもしれませんが、それでもかまわないので、まず常識や日常の枠では計れないものがあるのだ、という体験をしてほしいと思います。そして、アートという場において異なる価値観の作品に触れることは、多文
化社会を生きてゆく上で、きっと力になるのだ、と信じています。
唐津絵理さん(パフォーミング・アーツ担当)
パフォーミング・アーツでは、ジャンルを超えようとした複合的な作品にアプローチしています。舞台芸術にはダンス、演劇、音楽などのジャンルわけがありますが、実は、オペラやバレエなども元々ジャンルわけのない様々なアートの混沌としたるつぼの中から生まれてきたものです。現代のアーティストにとっては、他のジャンルのアートとのコラボレーションによって、新しい発見をして、予想もつかなかった作品が生まれることも多いのです。誰もが自分のテリトリーの中で、完結できてしまう時代だからこそ、他者と積極的にコミュニケーションをとって、異文化を理解することが次のステップのために重要になっているのだと思います。例えば、大ホールで開催されるローザスの『ドライ・アップシード』は、世界を代表する2人の振付家が始めて共同制作に取り組んだ作品です。ベースにあるのはマーラー作曲の「大地の歌」で、オペラ歌手や演奏家も出演します。振付家のアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル(ベルギー)とジェローム・ベル(フランス)は共に著名な振付家ですが、いくつになっても新しい挑戦をし続けるアーティストたちに、私たちも勇気をもらうことができると思っています。彼らは、環境問題にも関心が高く、なるべく飛行機を使わないとか、食べ物を選ぶなど、実際の行動にもひとつひとつにポリシーがあって、そこには、地域や文化を超えて、共によりよい社会を作っていこう、という意思が感じられます。
今回参加するアーティストのなかには、国籍、生まれた場所、育った場所、活動拠点のすべてが異なっている人も少なくないようです。こうした多様なバックグランドや生き方だからこそ生まれる表現を、彼らの作品に探してみるのも興味深いでしょう。この機会にぜひ足をお運びください。
「あいちトリエンナーレ2010」
URL http://aichitriennale.jp/


















