2023.11.17
1983年策定の「留学生10万人計画」から40年を迎える今年、首相の諮問機関「教育未来創造会議」は「J -MIRAI」(未来を創造する若者の留学推進イニシアティブ)を提言しました。2033年までに留学生40万人を受け入れ、卒業後の国内就職率を60%(国内進学者を除く)に引き上げることを目指しています。
留学生がより一層注目される中、名古屋に暮らす留学生はどのようなきっかけで日本に来て、日々を過ごしているのでしょうか?また、どのような夢や目標をもって勉強や研究に励んでいるのでしょうか。彼らの留学生活について聞いてみました。
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【国際留学生会館から~フンさん~】
一日本、そして名古屋で勉強しようと思ったきっかけを教えてください。
2019年7月にベトナムから来日しました。日本がどのような文化や歴史をもつ国か全く知りませんでした。そんな時、偶然ジブリアニメの「かぐや姫の物語」を観ました。平安時代の着物や映画の中で流れる音楽がとても印象的で、今でも覚えています。それから日本の色々なアニメを観ていくうちに、日本への関心が強まり、行きたいと思うようになりました。
当時は、名古屋の物価が自分にとってちょうどよかったので、ここに決めました。日本語学校を経て、2021年に日本福祉大学に入学しました。日本語学校に通っている時期はパンデミックと重なっていました。大学の受験期間だったのでステイホームが良かったこともありますが、勉強の傍ら励んでいたアルバイト先の飲食店は大きな影響を受けました。お客さんが少なくなって営業も難しくなったのですが、当時のマネージャーさんが人材確保に努めてくれたおかげで、生活に困ることはあまりありませんでした。
2021年から国際留学生会館(以下「ISC」)に入居していて、現在は大学3年生です。就職活動を頑張っています。
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一フンさんが過ごす1日のおおまかなスケジュールが知りたいです!
今の生活は主に就職活動で、学校以外の時間は企業研究やWEBテスト対策の勉強をしています。まるで修行僧のような生活です...!でも、ISCのイベントには積極的に参加しています。今年の夏にはISC近くの小学校で、浴衣を着て盆踊りをしました。浴衣を着るのも盆踊りを踊るのも初体験でしたが、地元の人たちに教えてもらいながらうまくできました。ベトナムにも日本のお盆のような時期がありますが、お寺に行って先祖にお供え物をして、お祈りをするのが一般的なので、日本とは少し雰囲気が違うなと感じました。
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フンさんの一日↓
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留学を経て、様々なルーツをもつ人と交流する機会があり、「自分も頑張らなきゃ」と刺激を受けました。私は社会問題、特に環境の問題解決に取り組みたいです。そのような大きな課題は、ひとりでは解決できません。人と人との支え合いが必要で、そのために色々なルーツや異なる考えをもつ人と話し合ったり、協力し合うことが大切だと考えています。自分のルーツや日本での留学経験を将来の目標に活かしていければ、と思っています。
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【世界各国を旅しても、ずっと日本に戻りたい気持ちがありました。―マルトさん】
一現在、どんなことを学んでいますか?また、来日のきっかけを教えてください。
現在、名古屋大学大学院の博士課程で、「国際開発」について研究しています。もともと東アジア文化学が専門で、母国エストニアの大学を卒業しました。
振り返ってみると、日本に関心をもったきっかけは、小学生の時に母が見つけた空手クラブに通い始めたことだと思います。そこから、武道や武術にも興味をもちました。初来日はおよそ18年前、早稲田大学国際教養学部での1年間の留学プログラムに参加した時でした。そのプログラム終了後、エストニアに戻り大学を卒業しました。日本に戻りたい気持ちはずっとあったのですが、まずは他の国も知ってみようと思い、様々な国を旅行しました。それでも、どこの国にいても日本に戻りたい気持ちが強かったです。例えば、ニュージーランドにいる時でも、地元の日本人コミュニティの中で過ごしたりもしていました!
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自分にとって関心があり、「役に立てる、貢献できるんじゃないかな」と思ったことが、現在も研究を続けている国際開発やそれにつながる平和構築の分野でした。面白いなと思うのは、日本の人たちの考え方です。争いを好まず、平和好きで、まずは相手に賛同する姿勢を日本の人たちから感じるからです。
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一日本での留学生活の日々がコロナ禍の時期と重なっていたかと思います。影響はありましたか?
世界中を旅した後、2014年に名古屋大学大学院の修士課程に入学し、2016年から現在の博士課程で研究に励んできました。パンデミックの時期とも被っていましたが、世界のどこにいても仕事や研究は、できたので、大きな影響はなかったと感じています。パンデミックは母国で過ごしていて、今年の4月にまた日本に戻ってきました。
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一「国際開発」について研究されているとのことでした。これらからの夢や目標はありますか?
現代には環境や貧困、戦争、人権のことなど、解決しなければならない問題がたくさんあります。この地球で生きる全ての人が「ひとつの地球にみんなで暮らしている(=地球市民)」という意識をもつ必要があると思います。地球が抱えている課題の根底のひとつには、文化の違いから生じる衝突があります。お互いが大切にしている自国の文化や習慣を尊重し、守りながらも、どのように調和を目指すことができるのか―。そういったことを自分にとって異文化である日本で研究し続けたい、そしてその研究成果や自分の経験を活かし、より平和な世界を築くことに貢献したいと思っています。
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