2025.03.26
2011年に厚生労働省「よりそいホットライン」(https://www.since2011.net/yorisoi/)の委託事業がきっかけとなり、2013年に任意団体として発足した「外国人ヘルプライン東海」(2024年に法人格を取得)。日本で暮らす外国人の方々のために、悩み事や生活における課題についての相談対応、同行支援、通訳や翻訳を行っている団体です。現在、200件のケースに対応しています。
代表の後藤美樹さんは、大学院在学中から長年、フィリピン人移住者センター(FMC)でフィリピン人支援に関わってきました。その活動の中で、問題が起こってから対処するのではなく、日本社会全体に働きかける必要があるのではないかと感じ、団体を立ち上げました。
同団体は、外国人への直接的支援だけではなく、行政機関や学校、医療機関で活動する「コミュニティ通訳者」の育成や研修の実施、行政機関や国際交流協会の相談窓口とのネットワークづくりなどの間接的支援にも力を入れています。「行政機関には外国人対応をもっとしっかりしてほしいと思う。クレームをいうのは簡単だが、解決にはつながらない。そうではなくて、社会全体で対応するために、何とか一緒にやれることを探したい」と話す後藤さん。連携することで、行政機関の専門性を活かしながら、対応できます。また、一度つながると、その後の相談ケースでもつながりやすいそうです。「行政機関、国際交流協会にも限界がある。NPOにも限界がある。その限界を超えて対応していきたい人たちと、お互いの役割を認識しながら、つながっていきたい」と後藤さんは話します。
活動の中で、苦労しているのは"名もなき支援"です。行政窓口への同行支援を行う際、相談員、通訳者の調整、また行政の担当者との事前調整が必要となります。「ケースごとにコーディネートが必要で、そこに労力と時間がかかる。周囲にはなかなか気づいてもらえない」と、後藤さんは支援のモヤモヤを吐露しました。
団体を継続していくには、資金面及び活動面で辛苦辛労がつきものです。それでも、継続してこられたのは、「相談対応で失敗したことを、失敗のままで終わらせたくない。次回で挽回したい」という矜持を持っていたこと。また、「お金がなくても、気持ちがあれば続けられることを示したかった」と後藤さんは言います。"同じ失敗を繰り返さない"という思いは、『NPO発!外国人相談ガイド~相談機関につなぐノウハウ集~』の発行につながっています。「失敗は自分だけでいい。他の人たちは同じ失敗をする必要はない。活動の中で蓄積した知識・情報をカタチにしていくことで、社会の外国人支援体制が広まればいい」と後藤さんは話しました。
今後の課題は、アウトリーチをどうしていくか。在住数に比べ、ネパール語とベトナム語の相談が少ないこと。「生活困難を抱えていても、助けを求められない人がいる。その人たちに、アプローチする方法を模索したい」と後藤さん。また、仲間を広げ、団体に関わってくれた人のアイディアを実現でき、継続的に運営ができるようにしていきたいとも話していました。
◎外国人ヘルプライン東海の相談員と通訳者の方にインタビューをしました。
取材に訪れた日は、ちょうど相談会の日でした。相談員や通訳者の方など、10名ほどのボランティアが集まっていました。同団体のボランティアスタッフは、いろいろなつながりや口コミで集まっています。「誰かの役に立ちたい」「相談者から寄せられる問題は難しいものが多いけど、問題が解決すると、自分もうれしい」と、口々に話していました。
【相談員Aさん】
Aさんは、大学で社会福祉を学び、地域開発を学びにフィリピンへ留学。その後、NPO団体の職員となりフィリピンで働いていていました。帰国後、名古屋市中区の池田公園で開催されたフィリピンフェスティバルで通訳者として参加したところ、後藤さんに声を掛けられたそうです。活動を続けているのは、さまざまな理由で母国を出て、日本に来て困っている外国人の方をほっとけないから。また、「制度の中にあるサービスとニーズをつなぐのではなく、社会の根幹を変えたい」と活動に対する思いを話してくれました。
【通訳者Bさん】
後藤さんと他の団体で一緒に活動していたそうです。そのころから、通訳として活動しており、現在はひきこもりの方への支援にも関わっています。外国人ヘルプライン東海での活動の意義を聞くと、「これまで自分に起こったことがない問題に関わるので、勉強になる。自分の知識が増えていく」と答えていました。また、「困っている人がいるなら、自分ができることでサポートしたい」とも話していました。
【通訳者Cさん】
来日21年で、フリーランスの通訳者であるCさん。外国人ヘルプライン東海に関わったのは、SNSでつながっている友達が、通訳募集の投稿をしていたから。来日当初、日本語がわからなく、困ったことがあっても相談先がわからなかったそうです。「他の人には、自分と同じ経験をしてほしくないから、活動をしている」と話していました。
【通訳者Dさん】
行政機関の窓口で通訳をしているDさん。同僚の紹介で、外国人ヘルプライン東海の活動に関わることになったそうです。大学で国際関係学を学んだことから、国際問題や難民問題にも関心を持っており、現在は難民支援にも携わっています。外国人ヘルプライン東海の活動について聞くと、「皆さん優秀で学ぶことが多い。自分も活動の一助になれるようになりたい」と話していました。
◎特定非営利活動法人外国人ヘルプライン東海
https://fhelplineinfo.wixsite.com/website-1
◎NPO発!外国人相談ガイド~相談機関につなぐためのノウハウ集~
日本語版のほか、英語版、ポルトガル語版、ベトナム語版、ネパール語版、中国語版、スペイン語版があります。下記ウェブサイトからダウンロード可能です。
https://fhelplineinfo.wixsite.com/website-1/%E6%B4%BB%E5%8B%95-1