2024.12.25
2024年11月23日(祝・土)に、「グローバルユースフォーラム『なりたい自分になるために~サッカー選手を目指していた僕がネパールで孤児院を運営する社会活動家になるまで~』」を開催しました。このフォーラムは、グローバル人材の育成を目的として、毎年実施しています。
今年度は、ネパールで孤児院を運営する若き社会活動家、竹中俊さんをお招きし、当日は定員を大きく超える114名もの方にご参加いただきました。ネパールでの活動や、行動し、挑戦し続けるモチベーションなどについてお話ししていただきました。
<ネパールとの出会い>
サッカー選手になりたくて、小中高大学とサッカー漬けの日々を送っていた竹中さん。サッカーの強豪大学に入ったものの、400人中背番号は399番。自分の限界を感じながらも、サッカーの練習に明け暮れ、食事管理もされ、ストレスがたまる毎日だったそう。そんな日々を送っていたところ、雪のため練習が2週間お休みになったところで、ヒッチハイクで日本全国を周る旅に。そこから、旅にはまり、面白い旅がしたいということで、ドリブルをしながら日本全国を周りました。
その後、世界に出たいと思い、2016年に初めてネパールに行ったそうです。ネパールに決めた理由は、インターネット上にネパールの情報がほぼなく、誰も行ったことのない国だったから。初めての海外で緊張していた竹中さん。しかし、実際に出会ったネパールの人たちの人懐っこさと親切さに「ネパールはめちゃくちゃいい国」と竹中さんは感じたそうです。
<子どもたちとの出会い、支援のきっかけ>
ネパールが好きになり、旅をしている中で紹介されたのが、のちに竹中さんが引き継ぐことになる孤児院。そこでは当時一人で運営していたシヴァさんと40人の子どもが暮らしていました。竹中さんが子どもたちと一緒に遊ぶと、食事を出してくれたそうです。ネパールでは、食事はゲストからします。先に食べた竹中さんのご飯にはおかずがたくさん載っていたのに、子どもたちのご飯にはおかずがなかったそうです。おかずがあるよりも、おなか一杯になるよりも、ゲストが来て楽しい、ゲストをもてなしたいというのが子どもたちの気持ちでした。竹中さんは、今度は自分が子どもたちの食事におかずをたくさんのせたい!と思い、支援を始めたそうです。それ以来(コロナの時期以外)9年間、竹中さんは、1年の半分をネパールで、子どもたちと一緒に過ごし、シヴァさんと一緒に孤児院を運営しています。
「子どもたちにハグされて、一緒に遊ぶのが自分の幸せ」と語る竹中さん(右から2人目)
<子どもたちの背景、子どもたちのこころの傷>
子どもたちが孤児院に来た理由はさまざま。2015年のネパール地震での孤児になった子どももいれば、親に捨てられたストリートチルドレンも。「捨てられた子どもたちのこころの傷は、思った以上に深い」と話します。幼少期に親と離れ離れになった子どもたちは、「親に捨てられてさみしい、悲しい」ではなく、「社会への怒り」の感情が最初に湧いてくるそうです。「なぜ自分だけが親に捨てられたのか」「なぜ周りの大人は無視するのか」。施設に来ると、同じ境遇の子どもたちに出会えて、その気持ちを共有し、理解し合えます。それだけで救われる子どもがいると竹中さんは言います。「日本でも、ネパールでも、どこでも共感し合えて、そのままでいいよと言ってくれる人がいるとほっとする。コミュニティとかつながりって、大事だなと思う」。
<子どもたちに言えないこと、伝えること>
世界各国の教育現場、児童養護施設を見てきた竹中さん。どこに行っても聞かれるのが、「努力したら報われる、夢が叶う」という言葉。「ネパールの子どもたちには、その言葉を気軽に言えない」と竹中さんは言います。その背景にあるのが、カースト制度。田舎に行けば行くほど、根強く残っています。ダリット(不可触民、アウトカースト)の子どもたちもいます。子どもたちは夢を語りますが、来世でしか叶えられない現実があります。
そんなとき、竹中さんは「どんな仕事に就こうが、仕事は生きていく手段でしかない。みんなは、日常の中に幸せがあることを知っている。だから、どんな仕事に就いても大丈夫」と伝えるそうです。
<行動、挑戦し続ける理由>
子どもたちに教育、そして進学・就労の機会を作るなど活動の幅を広げてきた竹中さん。とはいえ「活動していると失敗ばかり」と話します。子どもたちがおなかいっぱいになるようにと、日本からネパールに食料を届け続けてもなお、満足に食べられない子どもたちがいる。また、活動を批判されたり、頑張りすぎて自分が倒れてしまったことも。それでも続けてこられたのは、「子どもたちの存在と、自分に変えられることが少しでもあったから。子どもたちのためだけじゃなく、自分が幸せになれるから自分のためにやっている」。
参加者からの質問が多く、熱気にあふれていました。
またフォーラム終了後には竹中さんに個別の質問をする参加者で長蛇の列ができていました。
竹中さんは、「コツコツと活動をしていくしかない」と話します。しかし、ずば抜けた行動力と精神力でなりたい自分に向かってパワフルに活動する姿は、フォーラムの参加者に愛と勇気を与えたのではないでしょうか。否定されても前に進み、やり抜き、楽しむ竹中さんの生き方は、参加者に「新しいことに挑戦してみよう!」「なりたい自分になるために行動しよう」という気持ちを起こさせたに違いありません。