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経験を力に、次世代へつなぐ架け橋 ~外国にルーツを持つ人々が築く支え合いのかたち~Vol.1

2026.07.14

 日本では近年、外国人住民の増加に伴い、多文化共生の重要性が一層高まっています。

▲大島・ヴィルジニア・ユミさん

一方で、外国にルーツを持つ方への理解が十分とは言えず、言語や制度、雇用環境などの面においても、外国にルーツを持つ人々が日常生活や就労の場面でさまざまな課題に直面している現状もあります。

 そうした中で、自らの経験や歩みの中で見えてきた課題や学びを次世代へとつなぎ、同じような課題を繰り返さないための取り組みを続けている人がいます。ブラジルにルーツを持つ大島・ヴィルジニア・ユミさんです。

 1991年に出稼ぎ労働者として来日して以来、工場勤務から通訳、そして自治体での相談支援へと活動の場を広げてきました。その歩みの背景には、言語の壁だけでなく、日本の制度や雇用のあり方そのものに向き合い続けてきた経験があります。

 本特集では、大島さんの日本での35年にわたる歩みと、その中で見えてきた課題、そして未来に向けた取り組みについて全2回(Vol.1~2)の連載で紹介します。  

■工場勤務から通訳へ ー 支援の原点

Q.いつ日本に来られましたか。

A.1991年に就労を目的に来日し、愛知県で暮らし始めました。

Q.来日後の生活について教えてください。

A.最初は工場やブラジル系の輸入食品店で働いていました。日本で生活する中で徐々に日本語を習得し、周囲から通訳を頼まれる機会が増えていきました。

 当時から、病院や行政窓口などで言葉の壁に直面する人が多く、ボランティアとして通訳を行うようになったことが活動の始まりです。その後、派遣会社や市民病院などでも通訳として携わるようになり、市民病院では11年間勤務しました。

  現在は市役所において、ポルトガル語・スペイン語による相談支援に継続して従事しています。

■支援の広がりと、学びの場づくり

Q.これまでの取り組みについて教えてください。

A.2015年には、在住外国人支援に必要な知識やスキルを学び合う場として、「ブラジリアンコミュニティ通訳者サポートの会(以下、サポートの会)」を設立しました。ブラジル出身の通訳者が集まり、「多文化共生社会と防災」などテーマごとの講義や在名古屋ブラジル総領事館が主催した講演会にて通訳のボランティアを行うなど、実践的な学びの場として活動してきました。

 その後、こうした取り組みを発展させ、今年、2026年5月に「CoorerAtiva Tsuyaku労働者協同組合(以下、協同組合)」を設立し、代表を務めています。

■35年の経験から見えた課題 ―「言語」だけでは解決できない

 長年日本で暮らす中で、大島さんは「言語だけでは解決できない課題」があることに気づきます。日本では「日本語ができれば仕事に就ける」というイメージがある一方で、実際には日本語能力が高くても、在留資格の制約などにより非正規雇用にとどまらざるを得ない人も少なくありません。その結果、社会保険や退職金などの制度的な保障を十分に受けられない状況が生まれています。

 また、高齢期においても国民年金のみで生活せざるを得ないケースや、80歳を超えても働き続ける人の存在など、生活の安定に関わる課題も見えてきました。また、リーマンショックの際には、派遣雇用で働く多くのブラジル人労働者が職を失い、帰国を余儀なくされるなど、コミュニティにも大きな影響が及びました。

 こうした経験を通じて、「日本語の習得だけでなく、日本の雇用制度や社会保障制度など、生活に関わる制度そのものを理解し、その知識を次世代へ伝えていく必要性」を強く感じるようになったといいます。また、日本では「感謝状」などで努力が評価される文化があります。一方で、その評価が生活の安定や将来の保障につながるとは限りません。このような日本の慣習への理解も必要だといいます。

■「変えられないなら、つくる」― 協同組合という選択

 制度そのものを短期間で変えることは難しい。その中で大島さんは、「まずは自分たちでできることから始める」という考えに至りました。その実践の一つとして設立されたのが、協同組合です。

 現在も市役所で相談業務を続けながら、現場での支援と並行して、経験や日本の制度や慣習の知識を次世代へとつなぐ活動に取り組んでいます。サポートの会で培われた学びを発展させ、より実践的な支援や直接、仕事に結びつく通訳や翻訳のスキルの習得にも取り組む場として、この協同組合は位置づけられています。

 次回Vol.2では、協同組合が目指す具体的な取り組みや、今後の展望について紹介します。

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