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経験を力に、次世代へつなぐ架け橋 ~外国にルーツを持つ人々が築く支え合いのかたち Vol.2

2026.08.13

 前回の記事(Vol.1)では、大島・ヴィルジニア・ユミさんが、日本で暮らす中で感じた課題をきっかけに、「CooperAtiva Tsuyaku 労働者協同組合」(以下、協同組合)を設立するまでの歩みを紹介しました(Vol.1はこちら)。

 今回は、協同組合が目指す活動や、その先に描く未来についてお伝えします。

■メーデーから始まった新たな挑戦

 毎年5月1日は、労働者の祭典「メーデー」です。大島さんはこの日に特別な思いを寄せ、2015年に設立した「ブラジリアンコミュニティ通訳者サポートの会」(以下、サポートの会)を2026年5月1日に法人化。協同組合として新たな一歩を踏み出しました。

 「サポートの会」の通称は、ポルトガル語で「協同組合」を意味する「Cooperativa(コーペラチーヴァ)」でした。法人化にあたり、「Cooperativa」の「A」をあえて大文字にし、「Ativa(活動的な、アクティブな)」という意味を重ねて、「積極的に活動する協同組合」という思いを込めて仲間たちと名付けたそうです。

 役員はブラジル人4人、日本人2人の計6人で構成されています。まずは、「サポートの会」では十分に取り組めなかった事業に力を入れる予定です。日本語で行われる講座の理解を支援することに加え、通訳・翻訳の技能を学んだ受講者が就職につなげられる仕組みづくりも目指しています。現在はホームページを開設し、会員募集も始まっています。

■協同組合で実現したいこと ― 外国人支援の未来を描く

 協同組合の設立は、大島さんにとってゴールではなく、新たな挑戦の始まりです。目指しているのは、日本で暮らす外国人を支える人材を育成し、より質の高い支援につなげていくことです。

 その第一歩として計画しているのが、ポルトガル語・スペイン語の通訳者を対象とした勉強会です。国民健康保険制度など、日本の制度について日本人の専門家が講義を行い、その内容をポルトガル語やスペイン語で話し合う場を設けます。大島さんたちがコーディネート役となり、参加者同士が理解を深められる学びの場をつくりたいと考えています。

 続いて取り組みたいのが、行政通訳に求められる倫理やマナー、守秘義務について学ぶ講座です。すでに行政通訳として活動している人の中にも、守秘義務に関する知識が十分ではないケースがあることから、改めて学ぶ機会が必要だといいます。

 さらに、災害や防災に関する研修や、外国人相談員を対象とした講座の開催も視野に入れています。通訳者の中には、日本の避難所の仕組みを十分に知らない人も少なくありません。外国人住民を支える立場だからこそ、日本の制度や地域社会への理解を深めることが重要だと考えています。

 将来的には、発達に遅れのある子どもの支援や介護分野にも活動の幅を広げ、日本で暮らす外国人が抱えるさまざまな課題に寄り添っていきたいと考えています。「これまでは依頼を受けたときに通訳をすることが私たちの役割でした。でもこれからは、現場で見えてきた課題を通訳の立場から発信し、必要な支援や仕組みを提案できる存在になりたいと思っています。」その言葉には、言葉を訳すだけではなく、日本とブラジルをつなぐ「架け橋」として、外国人支援のあり方そのものをより良くしていきたいという思いが込められています。

 大島さんには、もう一つの夢があります。それは、数人が力を合わせれば、外国人であっても協同組合という法人格を取得し、自ら事業を立ち上げられることを、多くの人に知ってもらうことです。「大きな夢を持って、これからさまざまな事業に取り組んでいきたい。」協同組合の活動は、外国人住民への支援を充実させるだけでなく、外国人自身が地域社会の担い手として活躍できる環境づくりにもつながっていきます。

■夢を形にする ― 工夫を重ねながらの挑戦

 協同組合の設立までの道のりは、決して平坦ではありませんでした。「諦めたこともたくさんありました。」と振り返る大島さん。当初は、日本の法律や制度を一から学び、自分たちだけで法人設立まで進めることも考えていました。しかし、それには長い時間がかかります。限られた時間の中で実現を目指すため、専門家の力を借りることも大切な選択でした。

 役員6人はそれぞれ異なる地域に住み、本業を持っています。活動への思いは共通していても、全員がオンライン会議に参加することさえ難しいことがあります。それでも理想を諦めることなく、現実に向き合いながら一歩ずつ組合づくりを進めてきました。

■次世代に同じ課題を残さないために ― 大島さんの思い

 大島さんが活動を続ける原動力は、「自分たちの世代で経験した課題を、次の世代に繰り返させたくない」という強い思いです。現在、日本で暮らすブラジル人が抱える課題は、今後、日本で生活するネパールやベトナム、フィリピンなど、さまざまな国にルーツを持つ人たちにも共通する可能性があります。日本語が話せるかどうかだけでは解決できない課題が、日本の制度や文化の中には数多くあるからです。

 「日本語ができれば大丈夫、という問題ではないんです。私たちが経験した失敗や苦労を、次の世代につながないようにしたいと思っています。」大島さんは、日本人にも外国にルーツを持つ人との間にある「見えにくい違い」を知ってほしいと願っています。たとえ日本語を流暢に話し、見た目が日本人と変わらなくても、日本で育つ中で自然と身に付ける価値観や習慣は、学校だけでは学べないものも少なくありません。

 「日本には、相手を思いやり、空気を読みながら行動する文化があります。本音と建前も、その一つです。私は今では、それも日本の素敵な文化だと感じています。」

 一方で、ブラジルでは、自分の考えを話し合いやデモなどで表現する機会が比較的多く、社会との関わり方にも違いがあります。こうした文化的背景の違いを理解し、お互いに学び合うことが、多文化共生社会の実現には欠かせないと大島さんは考えています。

日本の制度や慣習、そして言葉だけでは伝わらない文化を次の世代へ伝えていくこと。それこそが、自分たちの役割であり、日本とブラジルをつなぐ架け橋になることだと信じています。

 行政通訳ボランティアとして始まった大島さんの活動は、協同組合の設立という新たな挑戦へと発展しました。その歩みは、外国人住民への支援にとどまらず、多文化共生社会の実現に向けた新たな可能性を広げています。

 大島さんたちが積み重ねてきた経験は、今、新たな支え合いの仕組みとなって次の世代へ受け継がれようとしています。日本とブラジルをつなぐ架け橋として続くその挑戦は、誰もが安心して暮らせる地域社会づくりにつながっていくことでしょう。

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