2025.03.20
名古屋市における外国人人口は増加し続けており、2024年12月1日現在は10万人を超えました。彼らが日本で生活する中で抱える悩みや課題は、外国人住民の出身国、来日目的、在留資格などをはじめ様々な要素が絡み合い、複雑になっています。
こうした人々に地域での暮らしに必要な情報を伝え、安心して生活が送れるようにするために国は、2018年12月「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を決定しました。これにより、外国人から寄せられる日本での生活全般についての相談に多言語で対応する「一元的相談窓口」が全国の都道府県や市区町村に設置されました。
名古屋国際センター(以下、「NIC」と表記)は、名古屋市の一元的相談窓口となっていますが、1984年の開設以来、外国人住民からの様々な相談に対して、多言語で対応しています。今回の特集では3回に渡ってNICの相談窓口について紹介することで、外国人住民の姿をお伝えしたいと思います。今回は特集(全3回)の第2回として、各種相談について紹介します。
個別性の高い相談への対応:各種専門相談
個別性の高い相談については、NICの専門スタッフや各種機関・団体と連携しながら専門相談*1を行っています。今回は「外国人行政相談」、「海外児童生徒教育相談」、「こころの相談」について紹介します。
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外国人行政相談
外国人行政相談(以下、「行政相談」)では、国民健康保険や医療・年金・税制度など行政全般や生活に関わる様々な相談に対して、月曜を除き行政相談員が毎日対応しています。この行政相談は相談のファーストステップとも位置づけられ、各種相談の中で最も対応件数が多いです。令和6年度は12月末現在747件の相談が寄せられています。
内容としては、在留資格に関するものが約半数(369件)を占め、次に労働50件、社会保険41件、国籍・親族関係・渉外戸籍28件、国税19件、市民税等14件と続いています。NICで解決のための流れや活用できる制度などを丁寧に説明し、例えば、区役所や労働基準監督署、年金事務所など、今後相談や手続きをすべき機関・団体等を案内します。
【相談例】
- 在留資格の更新をするために、必要な書類について教えてほしい。
- 職場で暴力・暴言を受け、会社の寮も追い出されてしまった。住む場所もお金もなく困っている。
- 一時帰国にあたって、社会保険料の支払いはどのようになるか知りたい。
- 子どもが生まれたが、どのような流れで手続きをすればよいか教えてほしい。
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海外児童生徒教育相談
海外児童生徒教育相談(以下、「教育相談」)は、外国人の子どもの教育全般、海外勤務に伴う子どもの教育・生活に関する相談に公立校の教員経験がある専門相談員が対応しています。相談日は日・水・金曜日です。相談は個人だけでなく、学校や関係機関から寄せられることも多く、令和6年度では12月末現在、306件の相談がありました。
外国人の子どもの教育に関する相談内容をみると、進路・進学に関するものが最も多く92件で、その内訳は「高校進学」が74件、「大学・専門学校」が12件、「その他キャリアに関すること」が6件です。次いで日本語学習が30件、学校の編入手続きが17件、学校生活に関することが17件となっています。
【相談例】
- 母国の中学校を卒業する前に来日した。現在17歳だが、日本の高校に行くにはどうすればよいか。
- 「なごやか中学校」(名古屋市の夜間中学)に入学するにはどうしたらよいか。自分は入学対象になるのか知りたい。
- 学校で友人ができず悩んでいる。転校することはできるか。
- 区役所から、子どもを小学校に通わせるかどうか確認する書類が届いた。通う予定の小学校名を書くようになっているが、別の区に転居する予定。どうすればよいか。
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こころの相談
異国での生活に起因するストレスを抱えたり、悩みを話す相手がおらず孤立しがちな外国人住民の悩みに臨床心理の資格や経験のあるカウンセラーが母語で相談に応じています。言語別にみると、令和6年度は12月末現在、510件の相談があり、そのうち、ポルトガル語、スペイン語での相談が全体の約95%を占めています。必要に応じて親子、夫婦など、家族ぐるみでカウンセリングをすることもあります。
相談内容は、精神の健康に関する相談や、生き方についての相談、親子や夫婦関係の相談が多いです。状況に応じて、学校・関係施設等との連携しながらカウンセリングを進めることもあります。
NICには、今回紹介した3つの相談のほか、弁護士による法律相談や行政書士による相談なども実施しており、外国人が日本で暮らすうえでの悩みや困りごと解決のためのきめ細やかなサポートを進めています。言葉がわからない、日本の制度等に関する知識が少ないこと等から必要な手続きができなかったり、住民として等しく受けられるべきサービスから排除されないよう、言葉をはじめとする様々なバリア(壁)を取り除く取り組みは誰もが安心して暮らせる地域づくりにつながると考えています。次回は、NICの相談窓口に外国人が来たらどのように対応しているか紹介します。
*1 NICの情報提供・相談事業(抜粋)
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事業名(通称) ※各事業の詳細はこちらをご確認ください。 |
内容 |
専門相談 |
国民健康保険や年金・税制度をはじめ、生活に関わるさまざまな相談に対応 |
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外国人の子どもの教育全般、海外勤務に伴う子どもの教育・生活に関する相談 |
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結婚・離婚や在留資格、労働相談などの法的な相談に弁護士が対応 |
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税金に関する相談や申告書の書き方に関する相談に税理士が対応 |
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夫婦関係・親⼦関係、⼦どもの学校や家庭生活など、⽣活の中での悩みや⼼配に関するカウンセリング |
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難民定住者の生活相談や難民認定申請者の保護措置に関する相談 |
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出⼊国・在留、国籍、起業等の⼿続きに関す る相談に⾏政書⼠が対応 |
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在留資格の更新・変更等の相談に名古屋出 ⼊国在留管理局の職員が対応 |
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日本語学習や日本語学習支援に関する相談 |
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ワンストップ総合相談会 |
関係機関・団体が集まり、一度に様々な相談ができる相談会 |
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情報提供 |
日本での生活全般や交流イベント等に関する情報提供 |